【徹底解説】2022年版中小企業白書・小規模事業白書まとめ

こんにちは、中小企業の戦略ラボ統括講師の岡本です。
今回は新たに公開された「2022年版中小企業白書」の内容を詳しく解説します。
新型コロナウイルス感染症、そしてウクライナ情勢などにより、中小企業を取り巻く環境は激変しています。
このような中、中小企業はどのような戦略を取っていけば良いのか、そしてそのためにどんな具体策を練っていけば良いのかを、詳しく解説します。

1. はじめに

まず、2022年版白書の概要を見てみましょう。
概要では主に次の4つが書かれています。

① 中小企業・小規模事業者の動向
② 中小企業における足下の感染症への対応
③ 企業の成長を促す経営力と組織
④ 共通基盤としての取引適正化とデジタル化、経営力再構築伴走支援

このうち、①は現状分析にあたります。
②はウィズコロナの対応策、③は今後の生産性向上に向けた取り組み、④は事業者だけでなく社外も含めた支援体制の構築を指します。

これらの項目を、それぞれ詳しく見ていきましょう。

2. ①中小企業・小規模事業者の動向

まず中小企業・小規模事業者の動向ですが、引き続き厳しい状況にあることが見て取れます。
企業規模別業況判断DIとは、業況が「好転」と答えた割合から「悪化」と答えた割合を引いたものですが、
これを見ると中規模企業はコロナ前の水準まで戻しているものの、中小企業・小規模事業者では戻りが鈍いことが見て取れます。

※2022年版中小企業白書より引用

次に、物価を見てみましょう。
コロナ禍とウクライナ情勢により物価が急激に上がっていますが、特に企業物価指数が大きく上昇しています。
反面、消費者物価指数はやや上昇している程度にとどまっておりますが、これは企業が価格点火を十分にできていないことを示唆しています。
つまり、原材料費などの高騰により原価が上昇しているものの、それを販売価格に反映しきれていないということです。
この状態が続くと企業の収益を大きく圧迫する事態になります。



そして労働生産性についてです。
白書では、大まかに言えば「営業利益+人件費(役員含む)+不動産賃借料+税金+利息など」で労働生産性を計算しています。
下のグラフでは、まず大企業と中小企業の労働生産性には大きな乖離があることが確認できます。
そしてここを注目していただきたいのですが、上位10%においては大企業が3,886万円、中堅企業が2,125万円に対し、中小企業は1,367万円とかなり低い数字です。
つまり、大企業と中堅企業の上位10%は「規模が大きいことによる効率化」が進んでいると言えそうです。


3. ②中小企業における足下の感染症への対応

2022版白書では、 「新たな時代へ向けた自己変革力」として②から④を一括りにしています。
その中で最初に求められるのが「中小企業における足下の感染症への対応」です。

2020年から断続的に感染症が流行し、その度に経済活動は大きく停滞しました。
このような中、国からの各種支援制度を効果的に活用した事業者が多かったようです。
特に雇用調整助成金については、2022年に入っても支給が続いていることから、コロナ禍の影響が長期化していることが伺えます。



また、2021年度から事業再構築補助金が大きな注目を浴びました。
弊社でも多くの案件をお手伝いさせていただきましたが、この中で注目すべきデータが見つかりました。
それが下記の「経営戦略の見直し頻度別、事業再構築の実施状況」です。

このデータによると、経営戦略を四半期ごとに見直している事業者は、事業再構築を既に行っていると解凍した割合が20%弱にのぼりました。
一方で策定・見直ししていない事業者は、わずか5.5%にとどまっています。

これはなぜかと言うと、「事業の見える化ができていない」ことに起因します。
つまり、事業の再構築を行おうにも「判断材料がない」ため、再構築を検討できないと言うことです。
このように見ると、経営戦略がいかに大事かということがよく分かります。


4. ③ 企業の成長を促す経営力と組織

続いて、中小事業者における「企業の成長を促す経営力と組織」について見てみましょう。
ここでは、特にブランド、組織・人材、経営戦略、学習の重要性について解説がなされております。

まずブランドですが、「顧客志向」をしっかりと行うだけでもかなりの違いがあります。
次のグラフを見ると、顧客志向が徹底できている事業者は取引価格に大きく寄与していることが読み取れます。



次に重視する経営課題ですが、ここでは圧倒的に「人材」が経営課題として挙げられています。
この原因は人材不足だけでなく、人材のやる気や能力も大きく関わってきます。
つまり、人数を多くするだけでは人材の課題は解消されない、ということになります。



人材に対する能力開発を行うと、非常に大きな効果が見込まれます。
次のグラフは能力開発と仕事に対する意欲の相関性ですが、能力開発に意欲のある人材は仕事に対しても非常に意欲的であることが分かります。
つまり、「どれだけ能力開発を積極的に行ってもらえるか」が人材の課題を解消する手段となります。



次に経営戦略です。
このうち、戦略の基礎となる「経営理念・ビジョン」の浸透については、驚くべき結果となりました。
何と、全社的に経営理念・ビジョンが浸透している事業者は、1人あたりの労働生産性で40万円以上も増加したという結果が示されました。
以下のグラフを見ても分かる通り、従業員の一部に経営理念・ビジョンが浸透している、もしくは社内に浸透していない事業者と比べると、非常に大きな違いがあります。
つまり経営理念やビジョンは、全社的に浸透させて初めて大きな効果が見込まれる、ということです。

最後に、経営者の学習についてです。
学習時間を意図的に確保している経営者とそうでない経営者では、売上高増加率に大きな違いが表れました。
下のグラフを見ると、約2倍の差が見て取れます。



また、興味深いデータが掲載されていました。
学習内容を実践している経営者とそうでない経営者では、売上増加率でさらに大きな差が開きました。
つまり学習しているだけでは十分ではなく、実践につなげてこそ大きな効果が見込まれる、と言う結論を導くことができます。



さて、ここまで①〜③の項目を詳しく解説してきました。
残るは④ですが、ここはデジタル化で非常に興味深いデータがあり、次の機会にじっくり解説したいと思いますので、今回は省略します。

5. さいごに

2022年版中小企業白書では、これまで以上に「中小企業・小規模事業者の積極的な取り組み」が重視されているように見えました。
その中でも、

・顧客志向のブランドづくり
・積極的な能力開発の促進
・経営理念・ビジョンを軸にした経営戦略の構築・浸透
・経営者の学習と実践

の4つは、売上高や利益率に直結する非常に重要な要素です。
つまり、これらを中心に取り組んでいくことで、経営基盤はガッチリとしたものになるでしょう。

そしてこれらは、「中小企業の戦略ラボ」で全て解決できる要素です。
特に漫画などで自発的な学習を促す要素が強いため、全ての基礎となる「積極的な学習」を社内に定着させることができます。
もちろん経営者の方の学習・実践にも好評です。
実際に中小企業の戦略ラボを使い、伴走型の経営支援なども行っています。

今、コロナ禍やウクライナ情勢などの影響により、中小企業・小規模事業者の経営環境は非常に大きな変化を迎えています。
だからこそ学習と実践を積極的に行い、売上高や利益率を高めるための取り組みを中小企業の戦略ラボで実現していきましょう。
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