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【緊急に備える労務対応 第四回】有事に備えた労働条件の見直し

皆さんこんにちは。カズ社会保険労務士事務所代表の 佐久間かずのり と申します。

今回は「有事に備えた労働条件の整備・検討」という件についてお話をしていきたいと思います。

前回の講座でお話させていただきましたが、会社として緊急事態(大規模災害)の起こった後、従業員の方々を雇用継続していくためにも「労働条件をあらかじめ見直し、整理・検討する」ということが重要になってきます。

労働条件の見直しとは

労働条件といっても色々なものが考えられますね? 災害が起こった後は、あらゆる指揮命令(業務命令)をする可能性があります。
前回お伝えしたように、休業でしたり出向やテレワーク。もしくは通常よりも遥かに多い残業でしたり休日労働。場合によっては賃金関係・処遇関係の措置も取らざるを得ないケースも出てくると。
そういったときに柔軟に対応できるような準備を、具体的なケースを見ながらお話していきたいと思います。

A県B市にあるX社。そこは創業以来、安定成長をずっと続けていて、ボーナスが毎年2回支給される状況になったと。就業規則の中でも「賞与は○月と○月に支給する」額も「これだけ支給します」ということを確定的に約束していました。
そんな中、大規模災害(巨大地震)が起きてしまい、X社自体が甚大な被害を受け、営業停止せざるを得ない状況になり、さらに複数の主要取引先も壊滅的な被害を受けてしまったと。災害によって苦しい経営状態に陥ってしまいました。
また不運にも発災の翌月は賞与の支給月。何とか数ヶ月分の月例賃金は工面できる状況ではありますが、賞与を平常時のように支給するということはもうできない状況になってしまっていました。

こういう時にどうするか? ということですが、漫画にあるように経営者として「すまんが我慢してくれ」と、一方的に賞与を削ってしまうのかどうか。それができるのかどうか。
更に漫画には「これって違法じゃない?」とありますが、この非常に重要な難しい問題をぜひ知っていただきたいのです。

就業規則を整備する

このケースは、お伝えした事例をもとに考えますと、この会社が一方的に「大規模災害に遭ったから」「経営難に陥ったから」といって賞与を減額したり、支給停止をすることはできません。法律上違法と考えられてしまいます。
これは就業規則に立ち返って考えることになりますが、既にお伝えした通り、この会社では「賞与を支給する時期も額も」確定的に約束していまして、緊急時の対応については特には何も書いていませんでした。

ですので緊急事態が起こったときは柔軟に運用する、すなわち賞与の減額や一時支給停止。事業運営が元に戻るまで支給停止するですとか・・・そういった条文が準備されていなかったわけなのです。
このような状況の中で、一方的に賞与を支給停止にしたり減額をしてしまうと、結局「約束違反」と「就業規則違反」ということになってしまいます。こういった状況が起こらないように、有事を想定して就業規則を整備しておく必要があるのです。

そうは言っても「大規模災害だから」という気持ちも、もちろん理解できます。ただ法律上は企業の責任が発生することが大いに考えられるので、やはりあらかじめ就業規則も含めて、緊急事態に対応できるような整備をしておくということが必要なのです。
今回は賃金の事例をご説明してますが、賃金だけではないですね? 先にお伝えしたように、休業時のこと、処遇のこと、テレワークや労働時間のこと・・・色々な問題があります。こういったものも含めて、事前に整理・検討しておくことが必要なのです。

事業継続計画というと、一番最初にお伝えしたように、労務面を説明したガイドブックや国自治体の資料はなかなかありません。
ですのでこういったところも具体的に作り込むという会社さんについては、ぜひ専門家、社労士等までご相談していただけたらと思います。

こういった対応をしっかりと会社が行っておくことで、その過程で会社と従業員さんの信頼関係がより強固になり、強い会社作りに繋がっていくかなと思います。

まとめ

振り返りです。
緊急時にも会社として円滑に、より迅速に、適法に事業運営を進めていく。ひいては雇用継続をしていくためにも、改めて就業規則や個別の雇用契約、そういったものを見つめ直すということをして欲しいと思います。
その中で就業規則を実際に改正するのかどうかというのは、様々な経営判断が発生してくるかと思います。ですがまずは「こういったこともありますよ」ということを知っていただきたいと思います。

最後になりますが、緊急事態が起こってからでは遅いのです。ここまでご説明してきましたあらゆる対応が、緊急事態が起こってからではほとんど対応できないと思います。
ですので、災害が起こる前にあらかじめ対策をしておいていただきたいなと思います。

以上で「大規模災害に関する労務対応」についての講座は終了となります。
受講いただきまして、ありがとうございました。

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緊急に備える労務対応

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